2018 年 41 巻 6 号 p. 179-191
わが国で導入されている種々の下水処理における生物処理過程で下水の藻類生長阻害作用が削減できるかどうかは未解明である。本研究ではわが国で導入事例が多いオキシデーションディッチ法等の4種の生物処理方法を導入した下水処理場の生物処理前水, 放流水あるいは二次処理水を下水試料として採水した。水界生態系の一次生産者として重要な藻類への影響に着目し, 下水試料に対し緑藻ムレミカヅキモを用いて生長阻害試験を実施した。その結果, オキシデーションディッチ法, 標準活性汚泥法, 嫌気好気活性汚泥法を導入した処理場では下水の生長阻害作用の削減が確認されたが, 嫌気好気ろ床法を導入した処理場では効果が削減されなかった。また, 阻害作用の削減能力は夏季に比べて冬季に低下する傾向にあった。生物処理方法及び季節によって生長阻害作用の削減能力は異なり, 様々な処理場において試験を行い, 更なる知見を蓄積する必要性があることが示された。