2020 年 43 巻 4 号 p. 127-132
カルベンダジムは, 農薬有効成分であるベノミル及びチオファネートメチルの環境中における加水分解物であることが知られている。カルベンダジムは, 我が国の環境水中及び底質中で検出されており, 水環境に生息する底生生物への慢性影響が懸念される。本研究では, カルベンダジムを底質に添加して調製した底質-水系を用いて, 我が国の在来種であるセスジユスリカ (Chironomus yoshimatsui) を一齢幼虫から羽化までカルベンダジムにばく露した。ばく露期間中, セスジユスリカの羽化率及び変態速度を調査した。その結果, カルベンダジムのセスジユスリカに対する底質濃度に基づく無影響濃度 (NOECsed) は3.07 mg kg-1であり, 我が国における環境底質中の最高濃度である0.018 mg kg-1より170倍高い値を示した。今後, ベノミル及びチオファネートメチルの底質毒性評価を行う際には本研究結果を考慮する必要がある。