茨城県のレンコン出荷量は全国一位を占めている。これまでの研究で, 茨城県土浦市手野地区のハス田群において, 夏季にTPの流出負荷量が上昇した。この原因解明のため, 本研究では手野地区の緑藻類がほぼ全面に繁茂するハス田においてDO濃度およびTP濃度, PO4-P濃度の調査を行った。その結果, ハス田田面水は緑藻類を含めた植物プランクトンの発生に伴い, DO濃度が過飽和になることが認められた。さらに, ハスの立葉が繁茂し始めると, DO濃度が4 mg L-1以下への低下が認められた。また, ハス田田面水のDO濃度が4 mg L-1以下になると, TP濃度がレンコン収穫後と比べ約2倍に上昇し, TPの中でPO4-Pが占める割合が用水に比べ, ハス田で有意に高い値を示した。これらのことから, 緑藻類繁茂ハス田では, 夏季にDO濃度が低下し, その影響でハス田底泥からPO4-Pが溶出し, TP濃度が上昇することが示唆された。
山間集落など大規模な水道施設の導入や維持が困難な地域を想定し, 紫外発光ダイオード (UV-LED) 装置を分散型水処理に活用する有効性を検証するため, 山間の沢水を未処理で供給する給水栓にUV-LED装置を設置して約1年間の実証試験を行った。未処理水は散発的ながら大腸菌陽性の場合や従属栄養細菌が水道水質管理目標値を超過する場合があり, 常時飲用には消毒が望まれた。一方, UV-LED処理水では細菌濃度, 検出率とも低下し, 処理水中の最大濃度は大腸菌, 大腸菌群, 一般細菌, 従属栄養細菌の順に0.5, 1.0, 6.0, 485 CFU mL-1で, 試験期間を通じて大腸菌不検出を達成した機種もあった。装置による従属栄養細菌の不活化率に運転時間経過に伴う低下傾向は認められず, 供用後の装置内部に顕著なスケール生成等も見られなかった。本研究により, 分散型水処理技術としてUV-LED装置を活用する可能性が示された。
カルベンダジムは, 農薬有効成分であるベノミル及びチオファネートメチルの環境中における加水分解物であることが知られている。カルベンダジムは, 我が国の環境水中及び底質中で検出されており, 水環境に生息する底生生物への慢性影響が懸念される。本研究では, カルベンダジムを底質に添加して調製した底質-水系を用いて, 我が国の在来種であるセスジユスリカ (Chironomus yoshimatsui) を一齢幼虫から羽化までカルベンダジムにばく露した。ばく露期間中, セスジユスリカの羽化率及び変態速度を調査した。その結果, カルベンダジムのセスジユスリカに対する底質濃度に基づく無影響濃度 (NOECsed) は3.07 mg kg-1であり, 我が国における環境底質中の最高濃度である0.018 mg kg-1より170倍高い値を示した。今後, ベノミル及びチオファネートメチルの底質毒性評価を行う際には本研究結果を考慮する必要がある。
近年, 印旛沼のCOD値は年平均値が10 mg L-1前後である。生活系や事業場系の排水対策が進み負荷量が減る中, 非特定汚染源からの流入負荷量の割合が増加している。印旛沼の水質改善を考える上で, 寄与率の高い非特定汚染源の情報は重要であるが, 印旛沼流域の水田調査は期間や分析項目の限定的なものが多く, 年間負荷量の実態調査が必要である。水田の揚排水機場において通年調査を行った結果, 年間の負荷排出量は, CODで47.8, T-Nで6.8, T-Pで0.61 kg ha-1 yr-1となり, 全国平均と比べて低い値となった。これは, 低地排水路の水を用水として汲み上げることで, 一部が循環利水となり, 負荷量が削減される効果が生じたためと考えられた。一方, 負荷排出量から負荷除去量を差し引いた値は, CODで-107.3, T-Nで-28.4, T-Pで-1.3 kg ha-1 yr-1となり, 吸収型となった。