日本の多くの閉鎖性海域で全窒素TN, 全リンTP濃度は大きく低下した。しかし, 有機物指標である化学的酸素要求量CODは低下しない現象が多くみられ, この原因を調べた。結果: (1) 海域のTN低下によって, 海水中の有機態窒素濃度は低下するものの, 有機態炭素TOCおよびCODは低下しなかった。つまり, 海域の有機物の炭素:窒素比 (C:N比) が上昇することによって, TOCおよびCODが低下しない現象が起きていた。 (2) 同様な, 窒素欠乏に伴う植物体有機物のC:N比上昇 (有機物の窒素含量の大きな低下, 炭素含量のわずかな低下) が海藻でもみられた。 (3) この, 植物一般にみられる特性は, 海水の栄養塩濃度が湾内で作られる有機物の性質 (C:N比等) を決めていることを示唆している。 (4) CODとTOCの関係は, 場所的および経年的に変化していた。 (5) 内湾での栄養塩削減は, 有機物の量を減らすよりも, 質を変えた。