2022 年 45 巻 5 号 p. 193-205
安全な水道水の供給を維持するためには, ふん便に由来する病原微生物による水源流域の汚染実態を把握することが不可欠である。本研究では, 効率的にウイルスを濃縮するために陰電荷膜法における塩化マグネシウム濃度, 酸洗浄溶液量, および誘出液浸漬時間を検討し, 得られた最適条件を用いて琵琶湖・淀川水系におけるトウガラシ微斑ウイルス, ロタウイルス, およびノロウイルスの汚染実態を調査した。さらに, ヒト, ブタ, 反芻動物それぞれに特異的なバクテロイデス目細菌遺伝子マーカーおよび医薬品 (カルバマゼピン, スルファメトキサゾール, スルファモノメトキシン) を測定することでヒト・動物ふん便汚染を評価した。その結果, 琵琶湖から淀川へ流下するにつれてウイルスおよびバクテロイデス目細菌遺伝子の濃度が増加することを示した。また, 桂川ではヒト由来のふん便汚染が, 木津川では動物由来のふん便汚染がそれぞれ顕著であることを明らかにした。