水環境学会誌
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45 巻, 5 号
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研究論文
  • 瀧野 博之, 三浦 尚之, 小坂 浩司, 秋葉 道宏
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 45 巻 5 号 p. 193-205
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/10
    ジャーナル フリー

    安全な水道水の供給を維持するためには, ふん便に由来する病原微生物による水源流域の汚染実態を把握することが不可欠である。本研究では, 効率的にウイルスを濃縮するために陰電荷膜法における塩化マグネシウム濃度, 酸洗浄溶液量, および誘出液浸漬時間を検討し, 得られた最適条件を用いて琵琶湖・淀川水系におけるトウガラシ微斑ウイルス, ロタウイルス, およびノロウイルスの汚染実態を調査した。さらに, ヒト, ブタ, 反芻動物それぞれに特異的なバクテロイデス目細菌遺伝子マーカーおよび医薬品 (カルバマゼピン, スルファメトキサゾール, スルファモノメトキシン) を測定することでヒト・動物ふん便汚染を評価した。その結果, 琵琶湖から淀川へ流下するにつれてウイルスおよびバクテロイデス目細菌遺伝子の濃度が増加することを示した。また, 桂川ではヒト由来のふん便汚染が, 木津川では動物由来のふん便汚染がそれぞれ顕著であることを明らかにした。

  • 山本 民次, 中原 駿介, 桑原 智之, 中本 健二, 斉藤 直, 樋野 和俊
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 45 巻 5 号 p. 207-221
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/10
    ジャーナル フリー

    中海干拓・淡水化事業で残された中海の浚渫窪地では, 硫化水素の発生が著しく, 生態系の崩壊につながっている。2012年12月~2013年2月に, 細井沖の小規模な窪地 (面積0.05 km2) を対象に, 環境修復資材である石炭灰造粒物を試験的に覆砂 (30,000 m3, 覆砂厚50 cm) したことで, 硫化水素の発生を大きく抑制できた。しかしながら, その後も敷設した石炭灰造粒物の上に有機物粒子が堆積し, 1年半程度で再び硫化水素の発生に至ることが分かった。石炭灰造粒物の適正な施工量について数値モデルを用いて検討したところ, 10,000 m3 (覆砂厚17 cm程度) 敷設でも十分な抑制効果があることが分かった。ただし, 有機物が継続的に堆積することから, このように薄い敷設を数年に1回, 繰り返し行い, 最終的に窪地を埋め戻すことが最も良いという結論を得た。

ノート
  • 平岡 礼鳥, 市川 哲也, 今尾 和正, 宮向 智興, 高倍 昭洋, 田中 義人, 鈴木 輝明
    原稿種別: ノート
    2022 年 45 巻 5 号 p. 223-230
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/10
    ジャーナル フリー

    環境DNAから生物群集の構造を定量的に評価するには, 濃度とともに分解速度や放出速度の知見が必要であるが, 海産十脚類の情報は不足している。本研究はタイワンガザミを例とし, 生息海域における環境DNAの分解速度と放出速度を検討するため飼育実験を実施した。分解速度係数は畜養なし個体が0.0397に対し, 畜養個体は0.0515~0.0586と算出された。魚類等の分解速度係数は0.0585~0.0919であり, 畜養個体の結果よりやや高いもののほぼ同等であった。飼育48時間後の放出速度は畜養なし個体では算出されなかったのに対し, 畜養個体は1.97~7.75 pg hr-1 ind-1と算出された。魚類等の放出速度は103~107 pg hr-1 ind-1であり, 海産十脚類の放出速度は魚類よりも遅かった。生息海域で海産十脚類の環境DNAを検出し, 定量的な評価を行うにはサンプル量等の検討が必要であると推定された。

調査論文
  • 岩崎 雄一, 小林 勇太, 末森 智美, 竹下 和貴, 梁 政寛
    原稿種別: 調査論文
    2022 年 45 巻 5 号 p. 231-237
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    全国の河川の水質測定地点 (環境基準点) 2925箇所を対象に, 集水域面積や標高, 集水域及び3 km周囲の土地利用割合に加えて, pH (最小値) , 生物化学的酸素要求量, 浮遊物質量, 全リン, 全窒素の5つの水質項目を整備した。さらに補足的に, これらの整備した物理化学的特徴に基づき, 階層的クラスター分析を用いて, 森林の土地利用割合が集水域で卓越し水質の良好なグループ1 (986地点) , 田畑または都市の土地利用割合が集水域で卓越し水質の悪化が懸念されるグループ3及び4 (それぞれ345及び310地点) , グループ1とグループ3及び4の中間的な特徴をもつと解釈できるグループ2 (1284地点) の4つの特性が類似するグループに分類した。本研究により, 任意の化学物質の濃度が高い地点がどのような特徴をもった地点であるか等を簡易的に評価できる, 水質測定地点 (環境基準点) の物理化学的特徴を整理したデータベースが構築できた。

  • 横山 智子, 飯村 晃
    原稿種別: 調査論文
    2022 年 45 巻 5 号 p. 239-244
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/10
    ジャーナル フリー
    電子付録

    2016年に底層DOが環境基準に追加された。閉鎖性の高い東京湾では, 赤潮や青潮が発生しており, 夏季の底層DOは2 mg L-1を下回っている。底層DOの低下の原因を探るため, 表層から底層までの水質鉛直分布図の過去15年の調査結果をまとめた。その結果, 毎年夏季に形成される水温躍層と, 降雨等による陸域からの淡水流入で形成される塩分躍層が, DOの低下に影響を与えていることがわかった。また, 水深が急激に深くなるSt.A (幕張沖深掘り跡地) では多くの年度で底層の酸素消費に赤潮プランクトンの寄与が認められたが, 海底が比較的平坦なSt.8 (湾中央) では, 年度によっては底層の酸素消費に赤潮プランクトンによる寄与が必ずしも大きくないことが推察された。DOの鉛直分布から貧酸素水塊の形成と解消時期の状況が確認され, 深掘り跡地の水深が浅くなったことで貧酸素水塊が縮小していた。

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