2023 年 46 巻 1 号 p. 11-19
過疎化, 高齢化の進む山間地域では, 公共水道に接続できず, 住民の責任で運営する集落規模の水供給施設を利用している場合がある。住民が施設運営に担う大きな労力的負担を考え, 住民支援を目的に, 省電力長距離通信 (Low-power wide-area, LPWA) の活用を提案した。簡易的な通信モジュールを作製し, 雑木林中で実験した結果, 920 MHz帯の電波は伝搬距離のおよそ5乗に反比例して減衰した。この結果から, 森林に囲まれた水供給施設における周辺の電波伝搬を予測したところ, 実測値と決定係数0.95 (p < 0.01, N = 20) で整合した。配水池水位のリアルタイム遠隔監視の試みでは, 住民が頻繁に施設に出向いて実施する目視確認に代わる手段として, 住民の負担を軽減できた。また, 水位を数値データとして記録できるようになり, 将来的には水不足の兆候を早期に感知する予防的な渇水対策にデータを活用する可能性が示された。本研究により, 山間集落の水供給施設管理におけるLPWAの実用性が示された。