部分循環湖である網走湖の上部好気層は, 夏季になるとアオコが発生し, 1950年代からはAnabaena属が優占しやすい湖沼であった。しかしながら, 近年Microcystis属等の他の藍藻の増殖が目立つようになってきた。我々はその理由を明らかにするために, 最大月3回の調査を実施した。網走湖の好気層への溶存無機態窒素 (DIN) の負荷は流入河川の影響を大きく受け, 溶存無機態リン (DIP) の負荷は嫌気層の影響を大きく受けていた。網走湖の好気層は夏季になるとDINが欠乏しやすい特徴があり, 窒素固定が可能なAnabaena属が増殖しやすい環境であるが, 流入河川の影響が大きくなるとDINの負荷が増加し, 他の種が増殖しやすくなると考えられた。近年, 流入河川のDIN負荷量が流域の農業等の変化と河川流量の増加によって大きくなっていることが, 優占した藍藻を変えている主たる要因と考えられた。