水環境学会誌
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研究論文
霞ヶ浦における夏季の湖岸水温
杉野 史弥小室 隆山室 真澄
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2023 年 46 巻 6 号 p. 157-162

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抄録

湖沼の湖岸水温は公共機関による水質調査や学術研究などの報告がほとんどない。そこで本研究では, 湖岸水温に関する知見を得るため霞ヶ浦の湖岸17地点に水温ロガーを設置し, 2022年7月~9月にかけて水温モニタリングを行った。湖岸は湖心より昼間に水温が高く, 深夜は水温が低い傾向にあり, 観測期間中の湖岸水温は最高で37.4 ℃にも達していた。また湖岸水温に影響を与える環境条件として消波堤と流入河川の有無を検討した結果, 消波堤がある湖岸では消波堤がない湖岸に比べ昼間は水温が高くなり, 流入河川の存在は付近の湖岸水温に影響を与えることがわかった。本研究の結果, 夏季の霞ヶ浦の湖岸では異常な高水温環境が形成されていることがわかり, 霞ヶ浦におけるワカサギやイシガイの減少を引き起こしている可能性が考えられた。地球温暖化に伴い湖岸水温はさらに上昇すると予想されるため, 湖岸生態系保全のため湖岸水温の継続的な観測が必要である。

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© 2023 公益社団法人 日本水環境学会
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