広島県尾道市浦崎町に位置する人工干潟で施肥材を使ったアサリ育成試験を行った。数値シミュレーションモデルを構築し, 水と泥を含む物質循環を計算したところ, フィールド試験で得られたデータを良く再現できた。アサリの餌となる底生微細藻の増殖制限因子は, 秋はリン, 冬は水温と日射量, 春~夏は窒素と, 季節で移り変わることが分かった。また, アサリの餌要求量からみた成長抑制は春になって顕著に起こることが明らかとなった。このことから, 施肥のタイミングは春の成長期の前から行うと良い。施肥材を多く使用すると, 個体が大型化し, 販売単価が上がり費用対効果が良くなることが示された。ただし, 底泥中での硫化水素の発生リスクを低減することを考えると, 2/5個 m-2程度 (施肥材間の距離2 m程度) の施肥量が良いと結論できた。