抄録
底質からのリンの溶出機構を解明する観点から,Fe(II)の酸化速度の測定法の検討を行った。ここでは,吸光度からの[Fe(II)]の測定が困難な高pH域での酸化速度を求める方法として,溶液の酸化還元電位(ORP)の実測値(Ehobs)を用いる方法を検討した。
結果は,Fe2+-Fe3+の酸化還元反応に基づく溶液のORPは,Eh=Eh0-0.059log[Fe2+]/[Fe3+](25℃)で表されるので,生成した水酸化第二鉄が沈殿平衡にある時は,[Fe2+]の時間変化は次式により予測できることが分かった。
log([Fe]2+t=t/Fe2+]t=0)={(Ehobs)t=0-(Ehobs)t=t}/0.059
ここで,水酸化第二鉄の見かけの組成式として,実験から得られた[Fe3+][OH-]2.68=10-35.8を用いた。
溶液の電位は時間経過と共にNO2--NO3-系の酸化還元反応により決まるようになると考えられたことから,得られた関係式を用いて1次式に基づくFe(II)の酸化速度を求める際は,Ehobsが時間と共に直線的に増加する部分を用いることが必要である。