日本水処理生物学会誌
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沼沢生態系における淡水産巻貝2種の食性と付着性・浮遊性ケイ藻群集の属構成の季節変動解析
福田 朱里内海 真生杉浦 則夫佐竹 隆顕
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2007 年 43 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

筑波大学構内の沼沢「松美池」において淡水産巻貝有肺類であるサカマキガイ(Physa acuta Draparnaud)とヒメモノアラガイ(Austropeplea ollula Gould)は同じnicheを占める競争関係にあり、ともに歯舌を用いて大型水生植物表面の付着性藻類を摂食している。同じ資源を巡る複数種においては、その体サイズの相違によって食い分けを行うことで食性を分化させ種間競争を回避する方法が知られているが、松美池では両種のサイズ分布に年間を通じてほとんど差がないことが演者らにより明らかにされている。そこで本研究では同所的に生息している両貝において、餌となる池の付着性・浮遊性ケイ藻類と両貝が摂食したケイ藻類組成の季節変動を比較することで、両個体群が共存するために食い分けの戦略をとっているのか考察した。対応分析を用いて6-12月の貝の腸管内のケイ藻類と池の付着性・浮遊性ケイ藻類の属構成を解析した結果、貝の食性は付着性・浮遊性ケイ藻類の季節変動より変化に富んでいた。選択指数の解析により、選択的に摂食したケイ藻類の属数は、サカマキガイよりヒメモノアラガイのほうが多いことが示された。本研究により、サカマキガイとヒメモノアラガイの食性にわずかに違いがあることが明らかとなった。2種間で明確な食い分けはないと考えられるが、2種間の食性の違いが松美池で2種が共存するための要因の1つとなっているかもしれない。

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© 2007 日本水処理生物学会
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