抄録
Microcystin分解菌のmicrocystin分解酵素遺伝子mlrA遺伝子、mlrB遺伝子、mlrC遺伝子は広く知られている。我々は、microcystin分解菌であるSphingopyxis sp. C-1株を用いてこれらの遺伝子の転写誘導機構を明らかにした。本研究ではmlrA遺伝子, mlrB遺伝子, mlrC遺伝子の転写が、microcystin-LR (MCLR)により誘導されるとともにmlrA遺伝子とmlrB遺伝子はMCLRの分解生成物 (鎖状microcystin, H-Adda-Glu-Mdha-Ala-OH (tetra peptide)と2S, 3S, 8S, 9S-3-amino-9-methoxy-2, 6, 8-trimetyl-10-phenyldeca-4E, 6E-dienoic acid (Adda))により誘導されることが証明できた。すなわちAddaは、mlrA遺伝子とmlrB遺伝子の転写の誘導に直接、関与する物質であり、microcystin-LRの環状構造はmlrC遺伝子の転写の誘導に重要なものであることがわかった。これらの解析結果から、MlrA酵素、MlrB酵素、MlrC酵素の発現に対してmicrocystin分解菌はMCLRとその分解生成物に応答しその連鎖反応を通してMCLRを分解することがわかった。