抄録
残留塩素(TRC)が河川の藻類群集の構造と増殖に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、処理水のTRC濃度が異なる2箇所の下水処理場の処理水が流入する河川の、上流と下流の広い範囲を対象として行った。その結果、藻類群集の種類数は、TRC濃度が高い(約0.5 mg/l)下水処理場の放流点付近の地点で冬季と夏季に7種と5種で、TRC濃度が低い(約0.04 mg/l)放流先付近の地点(冬季31種、夏季21種)に比べて少なかった。また、TRC濃度が高い地点で塩素耐性種の緑藻類のChlamydomonas sp.とMonoraphidium fontinaleが優占的であった。しかし、TRC濃度が0.1 mg/l以下に低下すると、珪藻類が優占的に出現し、種類数が20種以上になり、藻類群集が回復した。人工基物を用いた藻類の増殖実験で、TRC濃度が高い地点における藻類の種類数は、調査期間約2ヶ月を通して平均6種以下で、TRC濃度が低い地点に比べて少なかった。TRC濃度が低い地点から高い地点に人工基物を移動すると、人工基物上の藻類の種類数が減少し、珪藻類が優占する群集から塩素耐性種の緑藻類が優占する群集構造に変化した。これらのことから、塩素消毒された下水処理水が流入する河川でも、TRCが藻類群集に影響を及ぼすことが示唆された。