日本水処理生物学会誌
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46 巻, 2 号
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報文
  • 山際 秀誠, 高辻 渉, 中岡 元信, 古川 憲治
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    捺染染色工場から排出される廃水には尿素由来の有機態窒素が高濃度で含まれており、その窒素除去が大きな課題となっている。我々はこれまでに不織布を固定化担体に用いた新しい窒素除去法を開発した。本研究では、固定化担体として不織布の代わりに、和歌山県の地場産品でもあるパイル織物を用いた固定化材を用いて、連続硝化・脱窒処理試験を行った。結果、アクリル製のパイル織物を汚泥付着用の固定化担体として用いた場合、単位面積あたりの硝化速度は、不織布を用いた場合の約3.4倍に達した。このアクリル製のパイル織物を用いて、連続硝化処理試験を行ったところ、流入窒素負荷が0.5 kg/m3/day、滞留時間10時間で、約75%の硝化率を達成した。さらに、目詰まりによる処理性能の低下を防ぐために、ベース部分が格子状になったパイル織物を固定化担体として用いた連続硝化・脱窒処理試験を行ったところ、流入窒素濃度200 mg/l、流入TOC濃度450 mg/lの条件下で、目詰まりによる処理性能の低下なしに、HRT = 12 hrで約56%、HRT = 19 hrで約77%の窒素除去率を達成した。
  • ラン ム ゾー, 福嶋 悟, 小堀 洋美
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    残留塩素(TRC)が河川の藻類群集の構造と増殖に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、処理水のTRC濃度が異なる2箇所の下水処理場の処理水が流入する河川の、上流と下流の広い範囲を対象として行った。その結果、藻類群集の種類数は、TRC濃度が高い(約0.5 mg/l)下水処理場の放流点付近の地点で冬季と夏季に7種と5種で、TRC濃度が低い(約0.04 mg/l)放流先付近の地点(冬季31種、夏季21種)に比べて少なかった。また、TRC濃度が高い地点で塩素耐性種の緑藻類のChlamydomonas sp.とMonoraphidium fontinaleが優占的であった。しかし、TRC濃度が0.1 mg/l以下に低下すると、珪藻類が優占的に出現し、種類数が20種以上になり、藻類群集が回復した。人工基物を用いた藻類の増殖実験で、TRC濃度が高い地点における藻類の種類数は、調査期間約2ヶ月を通して平均6種以下で、TRC濃度が低い地点に比べて少なかった。TRC濃度が低い地点から高い地点に人工基物を移動すると、人工基物上の藻類の種類数が減少し、珪藻類が優占する群集から塩素耐性種の緑藻類が優占する群集構造に変化した。これらのことから、塩素消毒された下水処理水が流入する河川でも、TRCが藻類群集に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 高辻 渉, 山際 秀誠, 古川 憲治
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 2 号 p. 91-97
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    現在、梅加工場廃水処理場では不織布BF-T9Pが酵母UY7株の固定化担体として使用されている。今回我々はパイル織物を使用した酵母UY7株の固定化担体の開発を行った。パイル織物は既存設備をそのまま利用して生産できるため、市販されている担体に比べ安価となる可能性が大きい。ポリエステル製パイル織物E-pileは、TOC容積負荷4~15kg-TOC/m3/dにおいてBF-T9Pと同程度のTOC除去性能を有した。またE-pileの槽当たりの必要担体充填量は、TOC容積負荷8kg-TOC/m3/d以下では0.17m3-sheet/m3-tankで十分であることが確認できた。さらにE-pileに酵母を固定化した場合、低温時(5℃)にTOC除去性能の低下を遅らせ、温度を10℃に上昇させた場合にTOC除去性能を短期間に回復させた。これは固定化担体内部の溶液中に酵母が凝集した状態で存在するため、より安定に多くの酵母を反応器内に保持できるためと考えられる。
  • 山崎 宏史, 鈴木 理恵, 蛯江 美孝, 徐 開欽, 稲森 悠平, 西村 修
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 2 号 p. 99-107
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、生活排水とともにディスポーザ排水を処理するディスポーザ対応浄化槽の高度処理化(目標処理水質BOD 10 mg l-1以下、T-N 10 mg l-1以下)を指向し、嫌気・好気循環比と水理学的滞留時間(HRT)について検討を行った。また、その検討結果を基に、生活排水対応高度処理型浄化槽とディスポーザ対応高度処理型浄化槽について、排水処理、廃棄物処理を含めたLCCO2の比較評価を行い、排水の高度処理化とともにCO2排出量の削減も視野に入れたコベネフィット型浄化槽システムについて検討を行った。その結果、ディスポーザ対応浄化槽では、嫌気・好気循環比の増加およびHRTの増加に伴って、処理水BODおよびT-Nが低減することが確認された。これらの結果から、目標処理水質BOD 10 mg l-1以下、T-N 10 mg l-1以下を達成させるディスポーザ対応高度処理型浄化槽は、HRT 59.7時間、循環比6で設定することにより可能であることが明らかとなった。このディスポーザ対応浄化槽の高度処理化を可能とするHRTは、生活排水対応高度処理型浄化槽の1.21倍必要であることが明らかとなった。また、この検討結果を基に、生活排水対応高度処理型浄化槽導入ケースとディスポーザ対応高度処理型浄化槽導入ケースについて、排水処理、廃棄物処理を含めたLCCO2評価を比較した結果、生ごみを発生原位置で減量化させる後者のケースではCO2排出量が削減されることが明らかとなり、CO2排出量は前者に対して4.2%削減(-25.6 kg-CO2/(戸・年))される結果となった。
  • LAI MINH QUAN, TRAN THANH LIEM, DO PHUONG KHANH, 古川 憲治
    原稿種別: 報文
    2010 年 46 巻 2 号 p. 109-117
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/03/10
    ジャーナル フリー
    嫌気性アンモニア酸化細菌(anammox)は生育速度が極端に遅いことから、anammoxリアクタの運転においては、anammox細菌をリアクタ内に保持できる担体を使用しなければならない。本研究では、anammox汚泥をポリビニルアルコール(PVA)とアルギン酸ソーダで包括固定化することで、anammox汚泥をリアクタ内に安定して保持した。33.3 g/lに濃縮した150 mlのanammox汚泥とPVAとアルギン酸ソーダの混合液(15% w/v PVAと2% w/vのアルギン酸ソーダを含む)150 mlをよく混合した後、50%のNaNO3 w/vと2%のCaCl2 w/vを含有する溶液に滴下して、anammox包括固定化ゲルを調製した。包括固定したanammoxゲルの活性は徐々に高まり、運転開始145日後に流入KHCO3濃度を1.0 g l-1 に高めた結果、250日後には2.67時間の短い水理学的滞留時間で、窒素負荷9.9 kg-N m-3 d-1の条件下、80%以上の窒素除去率を達成することができた。PVAとアルギン酸ソーダでanammox汚泥を包括固定化したゲルが細孔構造を有することを走査型電子顕微鏡写真で確認した。この研究結果は、anammox汚泥をPVAとアルギン酸ソーダで包括固定化したゲルが、嫌気性消化脱離液のような高いNH4-N濃度で有機物濃度の低い排水からのNH4-N除去に適用できる可能性の高いことを示すものである。
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