抄録
本研究では性能評価型浄化槽における大腸菌群の除去に及ぼす影響因子の解析を行った。塩素消毒前までの処理工程において大腸菌群数の排水基準値を達成したのは、BOD除去型浄化槽では70.0%、窒素除去型浄化槽では88.3%であった。塩素消毒前に着目すると、BODとSSが低下することで大腸菌群数の値も減少した。さらに硝化率が上昇すると大腸菌群は低減することがわかった。次に塩素消毒を実施することで大腸菌群数の排水基準値を達成したのは、BOD除去型浄化槽では85.0%、窒素除去型浄化槽では100%であった。全残留塩素が検出されていても遊離残留塩素が未検出の場合、大腸菌群数の排水基準値を超過する浄化槽が存在した。アンモニアと塩素の反応で消毒効果が低い結合塩素が生成され、大腸菌群数の低減効果を阻害したことが示唆された。以上のことから、窒素除去型浄化槽は大腸菌群の高度除去に繋がることが明らかになり、衛生学的安全性の確保に寄与する浄化槽であると評価できる。