日本水処理生物学会誌
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Fill-and-drain型人工湿地による下水処理水からのテトラサイクリンとテトラサイクリン耐性遺伝子の除去
Pham Thanh Hien遠山 忠森 一博
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2017 年 53 巻 1 号 p. 11-21

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抄録

本研究では、人工湿地による代表的な抗生物質であるテトラサイクリン(TC)とその耐性遺伝子の除去能力と除去メカニズムについて検討した。ヨシの植生を入れたラボスケールのfill-and-drain(間欠浸漬)型人工湿地を作製し、そこにTCを230μg/Lとなるように添加した下水二次処理水を流入させて処理を行った。その結果、処理時間が1日の条件において、ヨシ植生人工湿地は95.4%、植生なし人工湿地(対照系)は87.2%のTC除去率を示した。処理時間が2日以上の条件では、ヨシ植生人工湿地および対照系人工湿地のTC除去率はほぼ100%であった。この人工湿地によるTC除去メカニズムを調べたところ、土壌吸着が速やかなTC除去に大きな役割を果たしていることが示唆された。また、僅かではあったものの、排水中の微生物によるTC分解も確認された。さらに、ヨシ植生により人工湿地のTC除去率が向上することも確認された。一方、ヨシ植生人工湿地によるTC耐性遺伝子(tetC, tetM, tetO, tetQ, tetW遺伝子)の除去を調べたところ、人工湿地流入水にはTC耐性遺伝子が1.7×102~2×104コピー/mL含まれていたが、1日の処理で全てのTC耐性遺伝子が人工湿地流出水から除去された。続いて、ラボスケール人工湿地の処理時間を2日に設定したfill-and-drain連続バッチ方式運転し、TC(250μg/L)汚染下水二次処理水の処理を28日間行った。ヨシ植生人工湿地は、TCの完全除去を28日間にわたって維持した。一方、植生のない対照系人工湿地のTC除去率は98.9~99.8%であり、処理日数が経つにつれてその除去率が低下した。このことから、ヨシの植生は、人工湿地によるTCの完全除去とその高い除去率の持続に貢献することが明らかとなった。さらに、ヨシ植生人工湿地はTC耐性遺伝子に対して対数除去率が3log以上の高い除去率を28日間維持した。以上の結果から、ヨシ植生人工湿地は、TCとその耐性遺伝子の除去技術として十分なポテンシャルを有することが明らかとなった。

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© 2017 日本水処理生物学会
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