2022 年 58 巻 2 号 p. 71-81
現在,マイクロプラスチックによる生態系や人への潜在的な影響が懸念されており,下水などの汚水もその排出源の一つと考えられる。膜分離活性汚泥法(MBR)は,その優れた固液分離能からマイクロプラスチックの除去にも効果があるとされるが,一方で,膜の材料自体がその劣化によってマイクロプラスチックを発生する可能性がある。したがって,MBRのさらなる利用にあたっては,ファウリング(目詰まり)の課題に加えて,膜材料の耐久性にも注意が必要である。そこで,本研究では,3種類の高分子(chlorinated polyvinyl chloride (CPVC), polytetrafluoroethylene (PTFE), and polyethersulfone (PES))を膜材料とする平膜について,ベンチスケールのMBRを用いて約2か月間にわたる模擬廃水の連続処理実験を実施し,膜の耐久性とファウリング生起に関する検討を行った。模擬廃水には,グルコース,肉エキスなどで調製した合成廃水を用い,活性汚泥浮遊物質(MLSS)濃度は11000-12500 mg/Lに維持して運転を行った。その結果,上記3種類の膜材料の抗ファウリング性能に大きな違いはみられなかったものの,PESを材料とする膜ではMBRでの運転による顕著な膜表面の損傷とそれに伴う膜構造の変化が認められた。一方で,CPVCやPTFEを材料とする膜では,膜表面の損傷や膜構造の変化は殆どみられなかった。以上から,本研究で使用したPES膜については,他の膜材質に対してマイクロプラスチックを発生するリスクが高い可能性が示唆された。本研究は,MBRにおけるファウリング現象とともに膜の力学的耐久性の視点から膜構造と特性を明らかにした初めての報告である。