抄録
インクジェット出力の印刷品質の向上と共に,耐光性と諸堅牢性に優れた顔料インクの使用頻度は増加している。顔料インクの色材は固体として溶媒内に分散されているため,メディアの表面に局所的に残存しやすく,その挙動が印刷品質に大きく影響を与える。
本研究では,顔料インクで印刷された,メディアの表面状態を観察する手段について検討を行ったので報告する。
1) 印刷表面における顔料インク色材の定量
顔料インクがメディアへ着弾した後の断面構造を観察するため,FIBとウルトラミクロトームでそれぞれ断面を作製し観察・比較した。FIBによる切削面では,インク色材の存在状態が明確に観察され,印刷濃度との相関も見られた。
2) 印刷部表面の3次元形状の観察
3次元形状の観察を,走査プローブ顕微鏡・共焦点顕微鏡・3次元電子顕微鏡の3機種を用いて行い比較検討した。その結果,走査プローブ顕微鏡による観察像において,着弾後の液滴跡が詳細に観察された。走査プローブ顕微鏡は空間分解能が高い上,光学的手法では限界のある垂直方向の計測が可能であるため,詳細な観察が可能であった。