2007 年 24 巻 3 号 p. 81-86
酪酸で誘発されるマウス結腸上皮細胞株 MCE301 細胞の細胞死を in vitro の潰瘍性大腸炎モデルとして用いて検討を行った。 44種類の漢方薬を対象にスクリーニングを行った結果, 半夏瀉心湯およびその関連処方4種が酪酸による細胞死を抑制することを見いだした。 活性の観察された漢方方剤の多くは臨床的に潰瘍性大腸炎の治療に応用される漢方薬であった。 半夏瀉心湯エキスの活性は, 構成生薬である黄連を除くことにより消失したことから, 黄連が活性発現に重要な構成生薬であると考えられた。 黄連エキス中の活性物質について検討した結果, 活性物質はベルベリンであることが明らかとなった。 潰瘍性大腸炎に対する半夏瀉心湯の臨床的な効果には, 酪酸によって誘発される結腸上皮細胞死に対するベルベリンの抑制作用が関与する可能性が示唆された。