抄録
22名の糖尿病(NIDDM)患者において, 右第一足指の足底面の振動覚閾値を測定した. 同時期に得た神経学的所見および腓腹神経伝導検査所見と振動覚閾値との関係に検討を加え, 振動覚閾値検査の臨床的位置づけを明らかにすることを目的とした. 神経学的所見に基づいた末梢神経障害(著者らの定義による, 本文参照)陽性者は22名中9名(41%)であった. 振動覚閾値の異常は22名中5名(23%)でみられた. 閾値測定不能例はなかった. 腓腹神経活動電位の振幅および腓腹神経伝導速度またはそのいずれかの異常は, 22名中16名(73%)で認められた. 7名で伝導速度が測定不能であった. これらの成績は末梢神経伝導検査が振動覚閾値検査より異常率が高いとする他の報告とよく一致した. 腓腹神経伝導検査が正常であった6名中の振動覚閾値はすべて正常であった. 振動覚閾値検査は, 末梢神経伝導検査より異常検出率は低いが, 測定不能例がなく, 末梢神経障害の経時的な病態把握に有用な検査法の一つと考えられる.