2018 年 38 巻 4 号 p. 717-722
症例は84歳,女性。1週間前から腹痛と嘔吐を自覚し,腸閉塞の診断で前医に入院したが,症状が改善しないため精査加療目的に当院転院となった。CTで左側腹部の小腸内に腫瘤を認め,USで腫瘤は高エコーを呈しており,異物の存在が疑われた。異物口側小腸は拡張しており,異物による腸閉塞と考えた。イレウス管を挿入したが症状は改善せず,小腸内視鏡での摘出もできなかったため,手術を施行した。鏡視下に異物を内包した小腸を同定し,臍部を小開腹して異物を摘出した。異物は3.5×3.0×2.5cm,黄色調を呈しており,結石分析で胆汁酸結石と診断された。過去の画像を検討すると,以前から十二指腸下行脚に憩室がみられ,6ヵ月前のCTで十二指腸憩室内に斑状のair densityを含む内部不均一な類円形腫瘤を認めていた。腸閉塞をきたした際のCTでは十二指腸憩室内の腸石は消失しており,落下腸石による腸閉塞と考えられた。