理科教育学研究
Online ISSN : 2187-509X
Print ISSN : 1345-2614
ISSN-L : 1345-2614
資料論文
物理学的問題処理における作図パフォーマンスの事例調査
仲野 純章
著者情報
キーワード: 物理, 問題処理, 作図
ジャーナル フリー

2022 年 62 巻 3 号 p. 667-673

詳細
抄録

学習者が物理学的な問題を処理する際に示す作図パフォーマンスへの理解は,教育実践上も重要であり,関連する基礎的データの蓄積が望まれる。本研究では,摩擦力についての学習を経た中等教育段階の学習者を対象に,文字情報として示された物体の物理的状況から当該物体に作用する静止摩擦力を思考・導出させる問題を提示し,これを処理する際の作図パフォーマンスの状況や作図パフォーマンスと問題解決の成否の関係性を事例的に調査した。その結果,作図パフォーマンスの状況については男女共に同様の傾向が見られ,両者間での有意差は見られなかった。また,男女共に作図パフォーマンスと問題解決の成否には相関関係が認められ,問題解決の成否に作図が重要な要因として関わることが示唆された。一方で,女子の場合は,男子に比べて作図パフォーマンスが問題解決に繋がりにくい傾向が見られ,「作業として作図ができたとしても,その後の思考に発展し難い」可能性が示された。今後,本研究を踏まえて調査の大規模化や多様化が図られ,物理学的な問題の処理における作図の意義と限界についてより厳密かつ多面的に論じられることが期待される。

著者関連情報
© 2022 日本理科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top