抄録
延髄弧束核(nucleus tractus solitarius, NTS), 延髄尾側腹外側降圧野(caudal ventrolateral medullary depressor area, VLDA), 延髄吻側腹外側昇圧野(rostal ventrolateral medullary pressor area, VLPA)は, 全身循環を調節する心臓血管中枢の最重要領域である. これらの領域の神経細胞が脳・脊髄循環の調節にどのような役割を持っているかは不明であった. 著者らは, この3者ともに脳血管収縮機能を持っていること, VLPAは脊髄血管収縮機能を持っていること, NTS内のN-methyl-D-aspartate(NMDA)receptorが脳循環の調節に関与している可能性があことを示し, さらにそれらの相互関係としてVLDAによる脳循環の調節はVLPAと頸部交感神経を介していることを証明した. 本総説では, それらの結果を踏まえ, 延髄心臓血管中枢による脳・脊髄循環の調節に関する最新の知見を紹介する.