抄録
シワハイルカSteno bredanensisの肺について, 比較解剖学的見地から, in situの状態で腐蝕標本を作って行う腐蝕解剖学的な研究を行った. これは, 肺内の気管気管支樹および肺動静脈の立体的研究を行うために, 最適な方法である. シワハイルカの肺は左右とも1葉から成り立つが, 2次的な気管支についてみると右肺に4本, 左肺に3本あり, 心切痕は左肺にある. 動脈上気管支は全部で3本あり, 右肺における気管気管支と2番目に頭側にある気管支および左肺における最も頭側の気管支であって, いずれもヒトの葉気管支(2次的気管支)に相当するものと見られる. 肺動脈は, 気管支樹に沿って走るが, 肺静脈は末梢部から区域間を走って4分岐の型をなして腹側に集合し, さらにこの集合点に背側からも1本の分枝が加わり, 結局5分岐の形を形成する.