Journal of UOEH
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ベトナムにおける職業曝露, 環境汚染と慢性呼吸器症状との関連についての分析
山本 美江子劔 陽子松田 晋哉グウェン A. ルオン
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2000 年 22 巻 4 号 p. 325-337

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抄録

1986年の市場経済導入後, ベトナムは急速な経済発展の過程にある. 産業においては利益が優先される傾向があり, 労働安全衛生や環境保護への配慮は軽視されがちである. 今回, 我々はベトナム北部の露天掘り炭坑とその周辺地域において, 質問票による健康調査を行った. これにより, 咳・痰・喘鳴・息切れ等の慢性呼吸器症状が認められた. また, 職業曝露, 居住地域との関連を含めた分析結果においては, 非現在喫煙者においては, 粉塵作業歴のあるものおよび環境汚染の進んでいる地域に居住しているもので有意に有症状率が高かった. 一方, 現在喫煙者においては, 粉塵作業歴のあるものにて咳・痰・息切れの有意な有症状率を認めた. 以上の結果より, 非喫煙者においては, 粉塵作業歴と環境汚染地域での居住, 年齢が慢性呼吸器症状の有無に影響すること, また現在喫煙者においては粉塵作業歴のみが影響することが考察された.
今回の調査結果を臨床的にも証明するためには, 今後の調査において呼吸機能検査などの生理学的検査を問診票による調査に加えて行う必要がある.

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© 2000 産業医科大学
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