2007 年 29 巻 4 号 p. 469-484
平成18年4月に改正労働安全衛生法が施行され労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の導入が推進されているが, 安全分野が主で, 産業保健分野の要素は含まれにくい. OSHMSで産業保健分野の要素を運用する際の課題を明らかにするため, 東証一部上場企業全1,581社を対象として平成16年12月に郵送でアンケート調査を実施した. 有効回答数は267社(16.9%)で, OSHMSを導入済みは23.2%, 導入予定は30.7%, 予定していない企業は46.1%であった. OSHMSを導入済みと回答した企業のうち12社だけがOSHMSに産業保健分野のすべての要素を含めていた. 産業医の専門性と産業医の現在の役割およびOSHMS導入, 産業保健活動のレベルとの間に有意な関連を認めた. OSHMSでの産業保健分野の要素の運用に関する啓発と産業医のOSHMSへの関与が産業保健分野をバランスよく含んだOSHMSの導入と運用に有効と考えられた.