2024 年 21 巻 p. 63-72
運動習慣が少なくなる大学生にとって,大学の体育授業は肯定的な感情をもたらすことが多く報告されている.本研究では大学体育授業での一過性の運動効果として,異なる運動種目を比較検討する余地があると考えた.目的は,ヨガとエアロビックダンスを実施した際の一過性運動による心理的効果を明らかにし,両種目を比較検討することであった.対象者は同意を得た大学1~3年生18名(男性3名,女性15名)であった.ヨガとエアロビックダンスのそれぞれが授業日となっている日を選択し,運動前後に二次元気分尺度(TDMS-ST)を用いて測定した.また,運動前後の心身の状態を記述してもらった.TDMS-STの結果から,ヨガでは落ち着きやリラックス感をもたらした.エアロビックダンスでは,無気力やだらけたといった気分を改善し,イキイキと活気にあふれることが明らかとなった.さらに両者間における心理的効果を比較したところ,活性度,覚醒度に有意差を認め,安定度,快適度では有意差を認めなかった.心身の状態記述からは,両種目ともに運動前は,だるい,眠い,という発言が多くみられたが,運動後は,スッキリした,という肯定的な発言へ変化した.以上のことから,ヨガとエアロビックダンスでは覚醒状態に差があるものの,共通して快適な状態になることが明らかになった.さらに毎週の体育は,一過性の心理的効果だけではなく,生活に対する気分を前向きにさせる可能性があると示唆された.