抄録
5年間にわたるポリオ罹患者の下肢筋力の変化を評価するため, 自主的に参加した地域在住のポリオ罹患者(63名, そのうち61名がポリオ後症候群)を対象として, 前向き縦断研究を実施した. すなわち, 5年間にわたって毎年1回, 固定式ダイナモメーター(Biodex)を用いた等運動性膝伸展筋力および膝屈曲筋力(ピークトルク値)を60°/秒および120°/秒の角速度で測定した. 5年後の時点で, 対象者の約90%の者が両角速度での膝伸展筋力の低下を認め, 同様に80%の対象者が膝屈曲筋力の低下を認めた. 膝伸展筋力(ピークトルク値)の1年あたりの低下率は, 両角速度において膝屈曲筋力のそれよりも有意に大きく, その差は角速度の速い場合により顕著であった. ポリオ罹患者の等運動性下肢筋力は, 経年的に進行性低下をきたすこと, また, 荷重筋である膝伸展筋力の低下率が膝屈曲筋力より大きいことが明らかとなった.