脊髄損傷後対麻痺で,右部分骨盤切除と左股関節離断術を施行した患者に対して,骨盤義足ソケットを作製した.重要な問題点は,骨盤切断端が非対称であることによる座位保持困難であった.我々は,座位保持の再獲得を主な目的として,骨盤義足ソケットを作製した.構成は,2重ソケット式で,外側は硬く,内側は柔らかい素材を用いた.特徴として,褥瘡の再発を予防するための圧分散を図り,安定した座位保持のためにソケットをわずかに後方に傾斜させた.加えて,通気孔,排泄管理のための腹部の窓,着脱のための2つのストラップを装備した.また圧分布測定器により断端と装具間の内圧分散を確認し,皮膚損傷の再発を予防した.患者は2ヶ月間の機能訓練を行った後,座位保持を再獲得し,自動車の運転ができるまで日常生活の拡大が可能となった.