抄録
症例は31歳女性で,10歳時に多発性内分泌腺腫2B型 (MEN 2B) と診断された.徐々に皮膚の黒色色素沈着が広がり,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)高値を認め,異所性ACTH症候群の合併が疑われた.副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH) 負荷試験ではクッシング病は否定的で,異所性ACTH症候群に矛盾しない結果であった.腹部CTで肝の多発する低吸収域を認め,ACTH産生部位として甲状腺髄様癌の肝転移巣がもっとも疑われた.MEN患者において甲状腺髄様癌からのACTH産生は比較的稀で,MEN患者における甲状腺髄様癌の肝転移巣からの異所性ACTH産生の報告は,これまでにない.