Journal of UOEH
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[症例報告]
抗Voltage-Gated Potassium Channel複合体抗体関連辺縁系脳炎の関与が考えられた成人発症内側側頭葉てんかんの1例
豊田 知子 赤松 直樹辻 貞俊西澤 茂
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2014 年 36 巻 2 号 p. 129-133

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抄録

近年,成人発症内側側頭葉てんかんの一因として抗Voltage-Gated Potassium Channel (VGKC) 複合体抗体関連辺縁系脳炎が報告されている.我々は50歳時にてんかん発作を発症した53歳の女性について報告する.初発てんかん発作の2か月後に施行された3.0テスラ頭部MRI検査では,フレアー法とT2強調画像にて左海馬高信号および腫脹を認めた.メチルプレドニゾロン経静脈的投与およびカルバマゼピンの経口投与を行い,治療1か月後の頭部MRI検査では左海馬異常所見の改善を認めた.その後てんかん発作を認めていなかったが,初発てんかん発作から3年後の脳波検査ではてんかん発作パターンを認め,頭部MRIにて左海馬高信号,FDG-PETにて同部位の集積亢進を認めた.血清VGKC抗体は118pM(正常値 < 100 pM)であった.ふたたびメチルプレドニゾロンの経静脈的投与を行った.2か月後には頭部MRI所見は改善し,3か月後にVGKC抗体は4.4 pMまで低下し,てんかん発作も寛解した.本例は中年期に内側側頭葉てんかんを発症しており,その原因として抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎が考えられた.原因不明な成人発症内側側頭葉てんかんでは,本例のように免疫学的療法が奏効する抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎を鑑別に入れる必要がある.

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© 2014 産業医科大学
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