抄録
産業医科大学構内において, 人間による破壊から再生への遷移系列上にある各生態系型の代表として, 2ケ所の新造成裸地, 芝生, 新生草地, 植込, 二次林を選び, 対照として北九州地域の生態系遷移の極相を示す常緑広葉樹の自然林を加えた, 合計7ケ所の土壌中のトビムシ(昆虫網, 粘管目)を比較研究した. 自然林のトビムシは密度, 種数, 多様度とも高く, 二次林はこれに匹敵するかまたはより高いほどであった. これらは植込から裸地にかけて徐々に低下したが, 密度と種数は新生草地で著しく落ち込んだ. 密度の垂直変化では各地とも深さ5cmまでの表層土に大多数が見出されたが, 自然林と二次林ではかなり深い所まで分布する種もあった. 他の新造成諸地点のうち, 真砂土を客土してつくられた植込では深くまで分布するが, 他は固い粘土質で, 表層にしかいなかった. 種数の垂直変化もほぼ同様であった. 全トビムシの分布型は森林でランダム分布を示し, 芝生から裸地にかけて徐々に強い集中分布となっていた. 各地の群集はその組成の類似度から, 森林型(自然林と二次林), 草地型(新生草地と芝生), 裸地型に分けられる. 植込は森林と草地の中間型で, 裸地は周囲の影響を受けることもあるが, 特有な群集を形成する傾向がある.