2021 年 43 巻 4 号 p. 433-443
症例は55歳の女性で,2020年7月に左側頭部の腫瘤を自覚し,急速に増大してきたために9月に当院に紹介となった.頭部CTで頭蓋骨の腫瘍性病変が疑われた.頚部-骨盤部CT検査を施行したところ,上行結腸に腫瘤陰影と肝臓に転移を疑う多発病変を認めた.大腸内視鏡検査でも上行結腸に2型様病変を認め,生検検査では腺癌の結果であった.4年前に他院で上行結腸に有茎性ポリープを指摘されており,病理結果は腺腫であったが,内視鏡的な切除は行われなかった.腺腫が多段階発癌の機序で転移を伴った進行大腸癌となったものと考えられた.頭蓋骨病変に関しては,上行結腸癌の転移性病変が疑われたが,急速に増大していることに加え,美容の面からも摘出術を希望され,同年11月に手術を施行した.術後の病理診断においても上行結腸癌由来の転移性頭蓋骨腫瘍であった.大腸癌取扱い規約第9版ではStage IVbの診断で,全身化学療法を開始したが,転移性肝癌は急速に増大し,2021年4月に永眠となった.