抄録
40才女性の右乳腺に発生したspindle cell carcinomaの1例を報告した. この腫瘍は極めて稀であり, 本邦では「いわゆる癌肉腫」の一型に分類されている. 組織学的に胞巣状の扁平上皮成分は境界不鮮明となって, 錯走する問質組織内に混入している. 電顕的には紡錘形腫瘍細胞と筋線維芽細胞に類似した腫瘍細胞が見られ. spindle cell carcinomaの発生には筋上皮細胞の関与も推測される. 予後は他の典型的な乳癌と大差はないとされているが, 本例は肉眼的に境界鮮明であり, 組織学的にも予後良好と考えられる.