住宅建築研究所報
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中流住宅の平面構成に関する研究(3)
青木 正夫竹下 輝和友清 貴和宮崎 信行岡 俊江河野 洋子末廣 香織藤田 由美磯貝 道義
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1986 年 12 巻 p. 111-126

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抄録
 本研究の内容は,近代の中流住宅を対象とする史的研究と,現代の中流住宅を対象とする現代研究に大別される。まず,史的研究編では,近代中流住宅の1つである,居間中心型平面の成立と展開の過程を解明し,その史的評価を再検討した。その結果は,次の通りである。第1に,この平面は,文部省による生活改善運動のなかで,生活難打開と生活洋風化を目的として提示された。第2に,この平面は,欧米住宅を模倣する観点から,我国住宅を欧米住宅化する計画手法の結果として成立した。しかし第3に,この平面は,居間の中央配置が計画上の考え方となり,2つの異なる方向に展開した。第4に,この平面は,欧米住宅の模倣から出発して我国住宅に接近するという異質な方向で成立し展開したから,住宅の歴史的発展の成果とは評価しがたい。次に,現代研究編の目的は,(1)居住者の接客空間に対する意識・要求を捉えることと(2)接客空間に対する要求構造を検討して,現代における続き間座敷の存在基盤を明らかにすることである。このために,前報の供給プランの平面類型化の典型事例に対する嗜好調査と住まい方調査を行った。その結果は,以下の通りである。座敷(床の間を備えた和室)に対する要求の強いこと,特に,和室2室の続き間座敷に対する要求が強い。しかし,座敷に対する意識に変化がみられて,それは座敷に対する意識と住まい方の両方をみると明らかである。即ち,座敷を格式的な空間と考えていて,接客と家族内儀礼の時だけ使用して,日常生活には全く用いない例が存在する一方で,座敷を実用的な空間と考えて日常的に就寝や家事に使用する例や座敷を不要と考える例もある。
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© 1986 一般財団法人 住総研
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