住宅建築研究所報
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藩域からみた農家住宅の地域的特徴と歴史的発展過程に関する研究(2)
大岡 敏昭木村 永遠中村 禎男
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1986 年 12 巻 p. 127-150

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抄録
 本研究は,江戸時代後期において,各藩独自の平面構成が成立分布し,藩領域で農家住宅の平面構成(発展系統)が異なっていたことを実証し,更に,江戸後期を基点にそれ以後の発展過程とそれ以前の各藩の特徴的な住宅の成立過程を解明,実証することを目的としているが,本報告は以下の研究課題について分析したものである。①前報告に引き続き,藩領域で農家住宅の平面構成が異なっていることについての実証事例の拡大を行い,前報告の東北(北部)地方と九州地方の15藩に引きつづき本報告は,東北(南部)地方の4藩と中部地方の4藩を対象に考察する。 ②各藩の農家住宅の発展過程を考察する。特に,1つの藩領域内に異なる系統の住宅の混在分布,及び同じ系統であるが異なる発展過程の住宅の混在分布がみられる藩の「混在化現象」と,ある系統の住宅から他の異なる系統への「転換過程」について分析する。③その藩で,独自で独特の平面構成の農家住宅が成立した要因を武家住宅,家作規制との関連で考察する。その結果,解明された主なことは以下の5点である。①東北南部地方の4藩,中部地方の4藩の農家住宅も藩によってその平面構成(発展系統)が異なり,その藩独自の平面構成が成立している。②しかも,ある藩域が江戸後期に天領化,他藩の飛び地化した地域においても,江戸中期までの藩領域が江戸後期に建てられた農家住宅の平面構成と分布圏域を規定している。③異なる系統の農家住宅が藩内に混在分布している「混在化現象」は,ある系統の住宅から異なるある系統の住宅への「転換過程」が存在している。④在郷武士がかなりいた藩の農家住宅は,その藩の城下町武士-在郷武士の住宅と極めて同質である。特に在郷武士の制度が江戸末期まで続いた藩はその傾向が顕著である。⑤家作規制は藩によって,その対象設定,内容,頻度が異なっている。そのことも,その藩の農家住宅の平面構成と分布形態を規定した条件の1つである。
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© 1986 一般財団法人 住総研
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