抄録
本研究では,区部の工業地域・準工業地域に最近立地したマンションに着目し,第1章において区部におけるマンションの供給動向と工業・準工業地域における供給動向を検討し,第2章では,居住者へのアンケートを中心に,①居住者の属性,②前住地の分析,③住宅・周辺環境に対する意識,④今後の定住意向を明らかにする事で,工業・準工業地域に立地するマンションの性格・機能を検討した。第1章では(社)日本高層住宅協会発行の「首都圏高層住宅全調査」を資料に,区部に昭和59年までに供給された物件をデータベース化した後,集計した結果,物件数で6,211件,戸数で286,999戸が確認された。このうち工業・準工業地域では940件,27,191戸が供給されているが,昭和50年以降,区部全体での供給量に対するシェアが高まっている事が判った。第2章では,昭和50年から55年の期間に相当数の世帯増がみられ,マンションの立地が顕著な5地区から各地区複数のマンションを抽出し,居住者アンケートを行なった。この結果,工業・準工業地域に立地するマンションの居住者は①地域に関係した層と,②都心への近接性を重視した層の2つに大別され,この2つの層の構成が立地によって異なり,前者の比率の高い地区内の住み替えの対象としての性格が強い事が判った。いずれの地区においても,地域に関係した層にとって,工業・準工業地域のマンションは「住水準の向上・持家の取得という目的を身近な地域で達成できるため,木賃アパートや給与住宅に住み,持家志向のある住民が,将来は郊外の戸建持家を希望しながらも,とりあえずマンションで持家化する」という性格が浮かんできた。