2007 年 33 巻 p. 253-264
本研究は,大正14年に建設された木造平屋建て棟割長屋である稲荷山下震災応急住宅の建設の背景と変容過程の解明を目的としている。結果,福祉的性格の強い仮設住宅の一種が横浜市独自の方法で2ヶ所建築されたもののうちの一つが当住宅であることが判った。また,稲荷山下住宅の平面計画と同潤会仮住宅の平面計画において,その室構成がほぼ同じであるが,稲荷山下住宅では公設バラックから小屋組みトラスを転用したことにより,平面計画,構造計画上の設計条件が生まれたであろうことが推察できた。実測調査では,減築,改築,そして梁行方向へのn戸1化といった,これまでの集合住宅研究ではあまり報告事例のない住みこなしが確認できた。