動物循環器病学会学術誌
Online ISSN : 2432-5392
症例報告
左前大静脈遺残が僧帽弁修復術後に及ぼす影響
水越 崇博水野 壮司水野 祐原田 佳代子沢田 保竹内 潤一郎内田 周平髙橋 新音篠田 麻子上地 正実
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2018 年 2 巻 2 号 p. 18-24

詳細
抄録

重度僧帽弁閉鎖不全症 (MR) の犬において左前大静脈遺残 (PLCVC) が僧帽弁修復術の結果に与える影響に関する症例を報告する。興奮時に虚脱することを主訴に来院した8 歳齢の雄のミニチュア・シュナウザーと発咳の悪化を認めた13 歳齢の雄のシーズーに対して超音波検査を行ったところ、外科手術適応のMR であると診断しこれらの症例に対して人工心肺を用いた開心術による弁修復術を行った。シーズーにおいては術前の検査において流速2.87 m/sec の三尖弁逆流の併発も確認され、軽度肺高血圧症を併発していた。2 症例共に術中に左心房外側を通過するPLCVC が確認されたが、遺残血管を背部に牽引して手術することにより通常通り左心房からのアプローチによる弁修復術を行うことが可能であった。

術後、シュナウザーの症例は順調に回復したが、シーズーの症例では術後3 日目の時点において右側からの心雑音がグレード5/6 に悪化し、超音波検査においては三尖弁逆流と肺高血圧症の増悪から遺残血管の拡張を認めた。さらに拡張した遺残血管が僧帽弁弁輪部を圧迫し左心房から左心室への血流を阻害している所見が認められた。右心負荷軽減の目的でシルデナフィルおよび利尿薬の投与を行ったが右心負荷は改善せず、肺水腫を伴う重度の呼吸困難と低体温を呈していたため術後13 日目に安楽死となった。

僧帽弁修復術を行うにあたりPLCVC 単独の症例では遺残血管に対する処置が必要となることは少ない。今回のシーズーの症例のように三尖弁逆流および肺高血圧症を併発している症例では、僧帽弁修復術後に左心房が縮小し遺残血管の圧迫が解除されると同時に術後合併症である肺高血圧症の悪化から増大した右心負荷が遺残血管を拡張させた結果、左心房から左心室への血液の流入が阻害され、心拍出量の低下をもたらした可能性が示唆された。それゆえ術前の心臓超音波検査では常にPLCVC の存在に注意して行う必要があり、術後は必要に応じて早期からの右心負荷を軽減するための内科的管理の徹底を考慮する必要があると考えられた。

著者関連情報
© 2018 一般社団法人動物循環器病学会

This article is licensed under a Creative Commons [Attribution-NonCommercial-NoDerivatives 4.0 International] license.
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/
次の記事
feedback
Top