動物循環器病学会学術誌
Online ISSN : 2432-5392
診療ノート
僧帽弁修復術後に重度肺高血圧を合併した犬の1 例
篠田 麻子正木 広泰上地 正実
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 3 巻 2 号 p. 29-33

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抄録

体外循環離脱後に生じる術後肺高血圧は再灌流後肺障害により発生する。これは肺血流量の低下に伴う虚血性障害と体外循環によって活性化される好中球と補体系による全身性炎症反応により惹起される。今回、我々は術前に軽度の肺高血圧を併発していた犬の僧帽弁修復術を実施し、術後に肺高血圧症の重症化を認めた症例を経験した。第3病日に呼吸数の増加と胸部X 線検査で肺野の不透過性の亢進を認めた。心臓エコー検査では顕著な三尖弁逆流と、重度の肺高血圧症を認めた。シルデナフィル、フロセミド、ピモベンダンの使用により呼吸状態が改善し、退院となったが、その後シルデナフィルとフロセミドの休薬に伴い、呼吸状態の悪化が認められたために、再開し経過観察中である。人でも開心術後肺高血圧症にシルデナフィルは有用であるとの報告がある。本症例も術前に比較して顕著な肺高血圧症の増悪を認めたが、残存した僧帽弁逆流が軽度であったために、人と同様に肺再灌流による内皮細胞障害や低酸素による肺血管攣縮、麻酔覚醒後の交感神経興奮による肺血管収縮などによる肺高血圧症が発生したものと判断した。本症例においては、術後に発症した肺高血圧症に対してはシルデナフィルが有効であったと考えられた。

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© 2019 一般社団法人動物循環器病学会

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