抄録
ベトナムの伝統的な小規模養豚農家では,ブタは裏庭の開放的な豚舎で飼育されており,ネズミを捕獲するためにネコが飼われている。このような状況の下では,重要な人獣共通感染症の1つであるトキソプラズマ症へのブタの感染をコントロールすることは難しい。本研究の目的は,ベトナム国フエ省における家ネコおよび肉用豚のトキソプラズマ抗体の血清陽性率をラテックス凝集反応(トキソチェック,栄研)により把握することにある。2007年に155匹の家ネコおよび肉用豚(と畜場から110検体,6件の養豚農家から150検体)から血液を採取した。ネコでは112検体(72.3%),養豚農家では62検体(41.3%),と畜場では76検体(69.1%)がToxoplasma gondii抗体陽性であった(1 : 64以上を陽性と判定)。ブタでは体重の増加に伴い陽性率が上昇し,15kg以下では16.7%であったのに対し,50kg以上では71%が陽性であった(OR=12.26,95% CI=3.31,45.34)。養豚農家からのサンプリングでは,2ヶ月後に同群から再度血液の採取を行った。1度目に採取した検体では陽性率が28.4%であったのに対し,2ヶ月後に実施した2度目の検体では64%に増加していた(OR=4.48,95% CI=2.14,9.39)。本調査結果により,現在ベトナムのフエ省において一般的にみられる伝統的な養豚システムの下では,肉用豚のトキソプラズマ症への感染率が高いことが示された。