2023 年 76 巻 5 号 p. e75-e80
7歳齢の避妊雌のトイプードルが,右前肢の跛行を主訴に受診した.初診時のX線検査では右肩甲骨の骨増生及び皮質骨の不整が認められた.病変部位の組織の一部を採取したところ,非感染性の骨の炎症が疑われた.プレドニゾロン内服によって臨床徴候の改善が認められ,休薬によって血中C反応性蛋白(CRP)の高値及び両後肢不全麻痺が認められるようになった.核磁気共鳴画像(MRI)検査によって,第1-2胸椎,第4-5胸椎の硬膜外脂肪の炎症が認められ,特発性無菌性化膿性肉芽腫と診断した.免疫抑制量のプレドニゾロン及びシクロスポリンの内服によって,両後肢の神経徴候は改善し,血中CRPは正常範囲内まで低下し,MRI検査では病変は消失していた.本症例では,無菌性化膿性肉芽腫が肩甲骨及び硬膜外脂肪に発症したと考えられた.