2025 年 78 巻 8 号 p. e95-e99
千葉県の犬で認められたHepatozoon canis 感染について報告する.症例は2024年3月に千葉県の山中で保護された年齢不詳の雌の雑種犬であり,乳腺腫瘍切除に伴い摘出された鼠径リンパ節において,病理組織学的検査により偶発的にHepatozoon属のメロントが検出された.また,血液塗抹標本では好中球細胞質内にガモントが認められ,さらに18S rRNA遺伝子解析によりH. canisと同定した.臨床的には異常所見を認めなかったが,本症例は国内で従来報告がなかった関東地方への本原虫の分布拡大を示唆する.したがって今後は,以前から流行地域とされている地域以外においても犬の原因不明の発熱や貧血を認めた際には,鑑別診断の一つとして本原虫感染症を考慮する必要がある.また,本原虫の伝播に関与するマダニの種の特定や,地域分布,野生動物を含めた疫学的調査の必要性が示唆される.