日本獣医師会雑誌
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牛の腫瘍性血尿症に関する研究
VI.予防について
前田 勉
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1979 年 32 巻 9 号 p. 504-508

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抄録

腫瘍性血尿症の予防法を確立するため, 発病地区内で本症の新たな発生が数年間にわたり止っている事例や過去に本症の発生がまったくみられない地区を対象に, とくにワラビとの関係を調査し検討を加えたところ, 本症の予防について次のように要約された.
基本的な方針としては, 粗飼料の供給基盤を充実させ豊富な草資源を確保することと, それと並行してワラビの給与や採食の機会を可能な限り遮断することであった.その具体的対策としては次の五つに大別された
1) 荒廃化した牧野や採草地を土地改良しワラビの根絶をはかり, かつ草生の改善により調和のとれた草地を作り上げる.その維持管理にも積極的に取り組む.
2) ワラビなどの有害野草を除去するため開発された除草剤「アシュラム製剤」を適用しワラビの根絶をはかる.
3) 草を刈り取る時や給与する際にその中に含まれているワラビを選別, 排除する.
4) ワラビを早急に除去することが困難な牧野ではとりあえず次の点に注意する.(1) ワラビが繁茂している区画は放牧を避ける.
(2) 草やワラビの採食状況に注意しながら過放牧にならないようにする. そのために草量と頭数の調和をはかったり, 早めに輪換をおこなう. また必要により適宜, 増し飼いを施す.
(3) ワラビ採食の危険性が強くなった場合には早めに下牧などの処置をとる.
5) 上記の方法によっても効果が期待できない場合などには, 飼養管理形態を再検討し種々な工夫をおこなう.
以上述べた基本的な考え方とそれに基づいた種々の具体的な対策が, それぞれの実情に応じて適用されるならば本症の予防は可能であると考える.

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