正常肉では屠殺後90分まで筋線維に著変がみられず, 屠殺後24時間で筋線維は萎縮し筋線維間に空隙の形成と筋内膜の網目構造が認められた.
PSE肉では, 屠殺後90分ですでに著しい筋線維の萎縮と筋内膜の剥離・断裂縁 (網目構造の崩壊) が認められた. DFD肉では, 屠殺後24時間でも筋線維の配列にほとんど変化がみられなかった. 筋原線維において, 正常肉のサルコメアは弛緩状態であった. PSE肉では収縮像が増大していたが, DFD肉では収縮傾向であった. 筋原線維の蛋白質組成を示すSDSゲル電気泳動像において, 正常肉ではみられない2本のバンドが, PSE肉では屠殺後10分で現れ, 90分で明瞭に認められた. これらのバンドはDFD肉となった硬直A亜群では認められなかったが, 実験I群で観察された. アクチンとミオシンの結合能 (収縮能力) を示すMg-ATP aseおよび肉製品の結着性を示す加熱ゲル強度は, PSE肉でそれぞれ低下していた. いっぽう, DFD肉となった硬直A亜群ではそれらの低下は認められなかったが, 実験I群では低下していた. PSE肉および実験I群におけるこれらのミオシンの変性現象は, 長時間の筋肉運動による肉温の上昇のためと思われる