1987 年 40 巻 8 号 p. 578-582
1985年12月, 群馬県下の一肉用牛飼養農家において, 元気消失, 食欲廃絶, 発熱等の臨床症状を呈した後, 起立不能にいたった黒毛和種1頭を予後不良とみて鑑定殺した. 剖検所見では, 肝臓表面および割面にほぼ小豆大の円形で辺縁が隆起した輪郭明瞭な結節が密発していた. 肺では, 右前葉と中葉に肉様化肺炎巣がみられ, 一部細気管支の白色肥厚などが認められた. 組織所見においては, 肝臓では広範囲にわたる強い壊死巣と血管を中心にした真菌の増殖像がみられ, 肺では浸出性肺炎像と一部の細気管支周囲に真菌の増殖および血管内への侵入像が認められた. 培養検査では, 肝臓からMortierella wolfiiが純粋に分離された.