日本獣医師会雑誌
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猫カリシウイルスに対するマウス-猫キメラ抗体の作製と安全性
梅橋 操子今村 孝秋山 俊介時吉 幸男
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2002 年 55 巻 5 号 p. 293-297

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抄録

猫に対し安全で, かつ, 特異性が均一で比較的容易に大量の抗体を得ることができるというモノクローナル抗体の特性を兼ね備えたウイルス治療用抗体を得るため, マウスー猫キメラ抗体 (キメラ抗体) の作製を試みた. 猫免疫グロブリンの定常領域遺伝子と抗猫カリシウイルス (FCV) モノクローナル抗体産生細胞から単離した可変領域遺伝子を用いて, 抗FCVキメラ抗体 (FID7) 産生細胞を作製した. FID 7産生細胞を培養して得られたキメラ抗体の10mg/kgまたは50mg/kgをSPF猫の皮下に6回反復投与し, 安全性を検討した. 対照のマウス抗体を投与した猫では, 流涙や痙攣, 血圧および脈拍数の低下が認められたが, キメラ抗体を投与した猫では異常は認められなかった. 以上の成績より, 猫に対して異種蛋白であるマウス抗体の抗体定常領域を同種の猫抗体定常領域に変換することにより, 猫におけるアナフィラキシー惹起性を回避できることが確認された.

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