Journal of Veterinary Medical Science
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臨床繁殖学:猫の新鮮精液による腟内への人工授精
田中 章弘高城 ゆうこ中川 清志藤元 葉子堀 達也筒井 敏彦
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2000 年 62 巻 11 号 p. 1163-1167

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抄録

猫の腟内への人工授精で,受胎に必要な精子数を明らかにすることを計画した,実験に用いた雌猫は29頭で,反復して使用した.雄猫は,2~12歳で精液性状が正常で,交尾能および繁殖能を有する6頭である.人工授精は,発情期の2~4日に排卵を誘起するためにhCG250iuまたは100iu×2回を投与し,初回投与後15,20または30時間に行った.なお,排卵の成否は,hCG投与後の末梢血中progesteroneの上昇で判断した.人工授精は,人工腟法で採取した精液を精子数20×106(実験1),40×106(実験2),80×106(実験3)の3段階について検討した.精液の腟内への注入は,全身麻酔下で直径1.5mm,長さ9cmのナイロン製ゾンデに1mlシリンジを接続した注入器で,腟内3~4cmに行った.その結果,排卵の誘起率は,45頭中43頭,95.6%であった.人工授精の結果,実験1の受胎率は,16頭中1頭,6.6%であった.実験2および実験3では,それぞれの受胎率は18頭中6頭,33.3%,9頭中7頭,77.8%であった.産子数は,実験2で,平均4.0±0.4(SE)匹,実験3で3.3±0.5匹で,両者に有意差は認められなかった.また,hCG投与後,授精までの時間と受胎率の間にも差は認められなかった.以上のように,猫において新鮮精液による腟内授精で,受胎に必要な精子数は80×106であることが明らかとなった.

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