Journal of Veterinary Medical Science
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62 巻, 11 号
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  • 郭 暁麗, 杉田 昭栄
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Anatomy
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1145-1150
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    ニッスル染色した馬(サラブレッド種)網膜の全伸展標本から網膜神経節細胞の分布様式を分析し,神経節細胞の総数を推測した.また,網膜各領域の神経節細胞のサイズを調べた.その結果:(1)神経節細胞の密度より,網膜は線状中心野,鼻側部,頭頂側部,背部及び腹部の5領域に分けられた.最大細胞密度は線状中心野で4,000cells/mm2,神経節細胞の総数は398×103−469×103(平均:441×103±31×103;n=4)であった.(2)細胞のサイズはその長軸と短軸の平均で表した.神経節細胞のサイズは5−53.8μmで,最低の平均サイズは線状中心野の14.0μmで,最高は腹部領域の25.9μmであった.神経節細胞のサイズのスペクトルは単峰性であった.これらの結果は今後の馬視覚機構に関する研究の解剖学的基礎データを提示した.
  • 山本 硬治
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Anatomy
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1183-1188
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    犬肝臓の小葉下静脈の内皮下に肥満細胞が多数認められるが,その機能については明らかにされていない.犬の肥満細胞の役割を明確にする目的で電顕的に観察した.二三の単球が内皮細胞の表面に接触しており,その直下には肥満細胞が位置していた.肥満細胞による単球の走化性を確かめるために,肝臓の静脈をヒスタミン駆出剤(Compound 48/80)で処理した.その結果,単球は内皮下層に侵入しており,細胞偽足を脱顆粒した肥満細胞の方に伸ばしていた.肥満細胞の顆粒内にある何らかの物質が単球の誘引物質として作用していると推測された.これとは反対に,肥満細胞が正常状態で内皮下層から静脈内へ移動していた.これらの移動中の肥満細胞は顆粒内に強い酸性フォスファターゼ反応を示した.移動している肥満細胞の顆粒は接触刺激の様な物理的力によって変化し,そこに含まれる酸性フォスファターゼ活性が可視化できるように成ったと思われた.また,類洞内に肥満細胞が認められ,肥満細胞の一部は血流によって他の部位に再移動することが示唆された.更に,肥満細胞は顆粒にヒスタミンやエンドセリン—1を保有しており,これら血管作動性物質が強い静脈収縮作用を持つことから,肥満細胞が肝臓の血流調節に重要な役割を演じていると推測された.
  • 長谷川 貴史, 猪俣 生輝
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Clinical Pathology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1205-1207
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    健常犬のリンパ球数ならびにリンパ球幼若化反応におよぼす遺伝子組換え型ヒト顆粒球コロニー刺激因子(rhG−CSF)の影響を検討した.健常犬に2.5μg/kgの濃度でrhG−CSFを3日間皮下投与したところ,投与1日ならびに2日後の末梢血中リンパ球数は増加したが,3日目以降は処置前のレベルに復した.また,rhG−CSF投与によりPHA,Con A,PWMに対するリンパ球幼若化反応が処置前の2倍に増強した.以上の結果から,健常犬に投与されたrhG−CSFにはリンパ球機能を活性化する作用があると考えられた.
  • Elie K. BARBOUR, Nassif E. BEJJANI, Nuhad J. DAGHIR, Obeid M. FAROON, ...
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Immunology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1139-1143
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    Thymulinおよび亜鉛をSalmonella enterica serovar Enteritidis(SE)ワクチン接種鶏に投与し,線毛に対する早期特異液性免疫応答の誘導ならびにSE生菌攻撃に対する防御効果を検討した.2群の鶏に15および19週齢時にSE死菌ワクチンを皮下接種し,他の2群は非免疫群とした.Thymulinおよび亜鉛を投与したワクチン接種鶏から得たプール血清中に,他の群と比較し最も早期に(ワクチン接種2週後)SE線毛(約21KDa)特異抗体を検出した.ワクチンのみを接種した鶏群においては,追加免疫後3週(22週齢)で抗体を検出した.非免疫·免疫促進剤非投与鶏を22週齢時にSE生菌攻撃すると,攻撃3週後(25週齢)に特異抗体を検出した.ワクチンおよび免疫促進剤を投与した非攻撃対照鶏には抗SE線毛抗体を検出しなかった.免疫促進剤投与により早期抗体応答をみた鶏群は,生菌攻撃を行った群中最も低いSE盲腸感染率を示し(10%),しかも盲腸扁桃に菌を全く検出しなかった.また,ワクチン接種群においては,卵管および脾臓にSE感染を認めなかった.これらの実験から,thymulinおよび亜鉛投与は抗SE線毛特異抗体応答を早期に誘導し,盲腸のSE検出率を低下させるとともに,盲腸扁桃,卵管および脾臓におけるSE感染を阻止することが明らかとなった.
  • 増田 晃, 助川 剛, 水本 直恵, 谷 浩行, 宮本 忠, 笹井 和美, 馬場 栄一郎
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Internal Medicine
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1177-1182
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    イヌの外耳炎ではMalassezia pachydermatisが優勢な起炎菌として検出されるが,この真菌の持つ宿主特異性や部位特異性を解明する一助とするため以下の調査と実験を行った.1370頭の来院犬中にみられた120頭の外耳炎症例を対象に,外耳炎の発生率,耳翼の形状,犬種との関係について疫学的調査を行った.垂耳犬種では672頭中85例(12.6%)が,立耳犬種では698頭中35例(5.0%)が外耳炎であり,両犬種間には有意差がみられた(P<0.05).脂肪酸定量のための耳垢材料が採取できた95例の耳垢サンプルについて,培養によりM.pachydermatisを確認した後,主な脂肪酸をガスクロマトグラフィーにより定量した.M.Pachydermatisの検出率は垂耳犬種で55.2%,立耳犬種で53.6%と差がなかったが,総脂肪酸量の平均値は垂耳犬種の方が立耳犬種よりも高く,立耳犬種でありながら極端に高い脂肪酸値を示したシベリアンハスキーの値を棄却すると両耳型群の間には有意な差(P<0.05)がみられた.42株のM.pachydermatis分離株について脂肪酸の発育増強効果を調べたところ,大多数の菌株が脂肪酸を利用しながら速く発育することが分かった.以上の結果から,犬種により差はあるものの脂質が多量に分泌されるイヌの耳道内では脂肪酸を好むM.pachydermatisがよく発育し,これはM.pachydermatisがイヌ外耳炎の優勢起炎菌になる理由の一つであると考えられる.
  • 田邉 智穂, 加納 塁, 永田 雅彦, 中村 遊香, 渡辺 晋一, 長谷川 篤彦
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Internal Medicine
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1189-1192
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    犬の色素性局面の病変組織からDNAを抽出し,鋳型としてパピローマウイルスのL1領域をクローニングした.さらにその遺伝子塩基配列を解析して,他のパピローマウイルスとの相同性についてデータベースを用いて検討した.その結果,ヒトのパピローマウイルスと64%相同性が認められ,それに比べて,犬の口腔粘膜のパピローマウイルスとは57%であった.次に同組織に対して,in situハイブリダイゼーションを用いて検討したところ,同病変部位にパピローマウイルスの遺伝子が存在することを確認した.
  • 由里 和世, 中田 勝久, 片江 宏巳, 長谷川 篤彦
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Internal Medicine
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1197-1200
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    犬の尿路感染症由来大腸菌6株を選び,マウス上行性腎盂腎炎モデルにおける病原性と尿路病原因子との関連性を調べた結果,同じ血清型で保有する病原因子が異なる3株の病原性には差異がみられ,異なる血清型でも病原因子が同じ4株の病原性は等しかった.腎臓の組織所見から感染成立にはpap,hly,cnf1が,重症化にはhly,cnf1が関与していた.以上により犬の大腸菌性尿路感染症の病理発生は尿路病原因子が深く関与していることが示唆された.
  • 鯉江 洋, 山谷 吉樹, 酒井 健夫
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Internal Medicine
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1221-1222
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    異所性尿管は外科処置後も尿失禁が改善されない例が多く,その要因の一つとして尿道括約筋の機能不全があげられる.尿道括約筋機能の指標として尿道内圧測定をおこなったところ,正常雌犬の最高尿道内圧は35.3±5.7mmHgを示したのに対して,異所性尿管例は14.5±3.3mmHgと顕著に低下していた(p<0.001).この結果は臨床症状と一致し,尿道括約筋機能の指標として尿道内圧測定が有用であることが示唆された.
  • 山下 耕平, 増田 健一, 阪口 雅弘, 小田切 大平, 中尾 義喜, 山木 光男, 長谷川 篤彦, 松尾 雄志, 大野 耕一, 辻本 元, ...
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Internal Medicine
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1223-1225
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    スギ花粉症は,日本スギ花粉抗原(CPAg)に反応するIgE抗体によって引き起こされるI型アレルギーの一種である.22頭の犬を対象にCPAgと水酸化アルミニウムゲルの混合物を2週間隔で2回,皮下に投与し,投与2週間後の血中CPAg特異的IgE抗体濃度を測定した.22頭中21頭でCPAg特異的IgE抗体濃度の上昇が認められたことから,犬において,CPAgによる感作を実験的に誘導し得ることが示された.
  • 渡邊 学, 立山 晉, 富樫 卓志, 内田 和幸, 山口 良二, 清水 孜, 菅野 純夫
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Molecular Biology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1217-1219
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    犬の乳腺組織由来cDNAライブラリーを用いてα−lactalbuminをコードするcDNAのクローニングを行った.degenerative oligo primer法及び5′,3′RACE法により742塩基対のcDNAをクローニングし,ノザンブロット法により完全長であることが示唆された.同cDNAのは142残基のアミノ酸をコードしており,アミノ酸レベルにおいて人,マウス,ラット,山羊,牛,羊のα−lactalbuminとそれぞれ71%,58%,60%,67%,66%,67%の相同性を示し哺乳類間でよく保存されていることが確認された.
  • 斉藤 守弘, 久保 正法, 板垣 博
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Parasitology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1209-1211
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    埼玉県内でと殺された牛から新種と思われるSarcocystis sp.が検出された.シストの大きさは3,400−4,400×198−238μmで,シスト壁は非常に厚く7−10μmで指状の絨毛状突起を有していた.絨毛状突起の大きさは8−9.5×2−2.5μmで,中心に微細管を有していた.本種の特徴は光顕像では牛寄生の既知種のいずれよりも著しく厚いシスト壁を有することと,電顕像では絨毛状突起が指状で特徴的な形状を示すことである.
  • 豊口 敦子, 小俣 吉孝, 小山 智洋, 神吉 武, 武田 圭生, 古岡 秀文, 古林 与志安, 角田 ふで子, 前田 龍一郎, 松井 高峯 ...
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Parasitology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1231-1234
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    Cryptosporidium parvum実験感染牛の唾液ならびに血清中の抗体活性を間接蛍光抗体法およびイムノブロッティングにより検索した.唾液中の抗C.parvum IgA抗体は感染後,一過性に上昇する傾向が示された.一方,抗C.parvum IgG抗体は感染経過に伴い上昇した.唾液中のIgA抗体は15kDa抗原に強い反応性が認められた.
  • 芝原 友幸, 佐藤 研志, 石川 義春, 門田 耕一
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Pathology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1125-1131
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    豚サーコウイルス(PCV)感染による細胞傷害機構を調べる目的で,PCV感染した12頭の豚について免疫組織化学ならびにTUNEL法を用いて検索した.組織学的に,リンパ系組織においてリンパ球のアポトーシス,リンパ球減少,多数の封入体あるいはアポトーシス小体を含有する大食細胞および巨細胞が顕著に認められた.免疫組織化学的に,リンパ濾胞には多数のlysozyme陽性大食細胞がみられる一方,CD79a陽性Bリンパ球の減少がみられた.TUNEL陽性のアポトーシス像を呈するリンパ球はCD79a陽性であった.PCV抗原は主に大食細胞の細胞質にみられ,また大食細胞とアポトーシスに陥ったリンパ球の核内にも認められた.電顕的に,PCVウイルス粒子が大食細胞に貪食されたアポトーシス小体に認められた.これらの結果より,Bリンパ球のアポトーシスを伴うリンパ球減少はPCVに起因し,封入体の一部はこのアポトーシスに由来するファゴリソソームであることが示唆された.これらのことから,PCVが豚を免疫不全状態にすることにより,発育不全症候群を発症させる引き金になると考えられた.
  • 上家 潤一, 代田 欣二, 八巻 宗貴, 北川 均, 和崎 正彦, 黄 鴻堅
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Pathology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1193-1195
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    犬糸状虫感染犬で糸球体毛細血管壁への連続性線状IgG沈着を特徴とする糸球体腎炎を示す4例と,正常対照犬2例における腎糸球体基底膜(GBM)の陰性荷電部位(ASs)を,ポリエチレンイミンを用い電顕的に観察した.ASsは対照犬のGBM緻密層(LD)には存在しなかったが,感染犬では肥厚したLDに層状,不規則に分布し,外透明層では対照犬に比較して有意に多く,また,内皮下の連続性沈着物内にも存在していた.
  • 山内 啓太郎, 添田 知恵, 鈴木 俊一, 長谷川 晃久, 内藤 邦彦, 東條 英昭
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Physiology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1213-1216
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    骨格筋a−アクチンプロモーターにより筋細胞のみにenhanced green fluorescent protein(EGFP)を発現させるベクター,pSKA−EGFPを構築した.pSKA−EGFPを導入したラット骨格筋初代培養細胞では,EGFP陽性細胞はすべてデスミン陽性であった.これらEGFP陽性細胞の中には,増殖中の細胞,すなわち筋衛星細胞が存在していた.馬骨格筋由来の初代培養細胞でも,pSKA−EGFPによりEGFP陽性を示す細胞が観察され,これらの細胞は,in vitroで筋管細胞を形成した.以上の結果から,pSKA−EGFPは筋衛星細胞を同定し,その挙動を生存状態でリアルタイムに観察するうえで有用であると考えられた.
  • 幸田 知子, 鎌田 洋一, 小崎 俊司
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Public Health
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1133-1138
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    ボツリヌス菌B型神経毒素はSS結合で結ばれた重鎖と軽鎖から構成され,軽鎖の持つ蛋白分解活性により,シナプス小胞に存在するシナプトブレビン2を2つのフラグメントに切断することで神経伝達物質の遊離を阻害する.生じた2つのフラグメントは,いずれもシナプトブレビン2のN末端20残基の合成ペプチドに対する抗体に対する反応性を消失していたことから,切断によりN末端領域の抗原構造に変化を生じていることが示唆された.ラット脳シナプトソーム膜に結合した神経毒素は,膜内で還元を受けた後,シナプス小胞内に取り込まれシナプトブレビン2を切断すると考えられた.また軽鎖が単独で細胞質分画に存在することから,神経毒素はシナプス小胞のリサイクリング機構を利用して小胞内に侵入し,さらに軽鎖は小胞膜を通過することが示唆された.
  • 大宅 辰夫, 丸橋 敏広, 伊藤 博哉
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Public Health
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1151-1155
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    大腸菌O157は,牛が主たる保菌動物であり,糞便中に排菌されることが知られている.我々は,大腸菌O157保菌牛の排菌阻止を目的とした生菌製剤を開発し,実験感染牛への経口投与による予備的な排菌阻止試験を試みた.生菌製剤の試作には,成牛糞便から分離した乳酸産生菌であるStreptococcus bovis LCB6株及びLactobacillus gallinarum LCB12株を用いた.4ヶ月齢のホルスタイン牛8頭に大腸菌O157を実験感染させ,感染7日後に排菌を継続した4頭の保菌牛に生菌製剤を経口投与し,大腸菌O157排除効果を調べた.生菌製剤の投与により,糞便への大腸菌O157の排菌は完全に阻止され,再排菌も認められなかった.実験期間中の糞便中VFA濃度を定量したところ,排菌阻止は,生菌剤投与をきっかけとした糞便中VFA,特に酢酸濃度の急激な上昇と相関していた.また,実験感染の過程で感染しなかった4頭の糞便中VFA濃度は,感染した4頭に比べ,有意に高く,牛での大腸菌O157保菌には糞便中VFA濃度が一要因として関係していると考えられた.今回の成績は,特定の条件下の牛を用いた予備的試験において得られたものではあるが,生菌製剤の応用による大腸菌O157保菌牛の排菌阻止の可能性が示唆された.
  • 織 順一, 吉海 拓史, 吉村 修一, 氏野 英昭, 高瀬 勝晤
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Surgery
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1201-1203
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    7ヶ月齢,雄,体重3.7kgのシーズー犬が,左眼の白内障で来院した.眼科検査では,正常な水晶体前嚢で被われた核白内障と後部皮質に多数の空胞がみられた.眼科超音波検査では,水晶体皮質中の高エコー像と後方に高エコー性の漏斗状所見が得られた.これらの結果から,左眼球の先天性白内障を伴った後部円錐水晶体症と診断された.後部円錐水晶体と白内障の診断的治療のため乳化吸引術を実施し,経過は順調であった.
  • 田中 章弘, 桑原 繁, 高城 ゆうこ, 中川 清志, 藤元 葉子, 村井 真弓, 筒井 敏彦
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Theriogenology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1157-1161
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    猫の射精間隔と精液性状について,3~5歳の雄猫4頭を用いて検討した.採精は人工腟を用いて,連日,隔日,3日間隔で,それぞれ10回行った.なお,採精日には2回連続して採取し,それぞれの精液性状を観察した.その結果,連日採精では,第1採精の精子数の大幅な減少が認められ,また,4日目から未熟精子の出現率が急増した.隔日および3日間隔の採精では,精液量は第1および第2採精とも個体差は大きいが,ほぼ同量で推移した.精子数は,第1および第2採精で同様に推移したが,第1採精が明らかに上回った(p<0.01).精子活力と精子奇形率は,各種採精間隔,第1および第2採精,各個体においても安定し,変化は認められなかった.以上のように,猫では採精日に2度連続採取した場合に,1日以上の採精間隔で安定した精液性状を維持できることが明らかとなった.
  • 田中 章弘, 高城 ゆうこ, 中川 清志, 藤元 葉子, 堀 達也, 筒井 敏彦
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Theriogenology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1163-1167
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    猫の腟内への人工授精で,受胎に必要な精子数を明らかにすることを計画した,実験に用いた雌猫は29頭で,反復して使用した.雄猫は,2~12歳で精液性状が正常で,交尾能および繁殖能を有する6頭である.人工授精は,発情期の2~4日に排卵を誘起するためにhCG250iuまたは100iu×2回を投与し,初回投与後15,20または30時間に行った.なお,排卵の成否は,hCG投与後の末梢血中progesteroneの上昇で判断した.人工授精は,人工腟法で採取した精液を精子数20×106(実験1),40×106(実験2),80×106(実験3)の3段階について検討した.精液の腟内への注入は,全身麻酔下で直径1.5mm,長さ9cmのナイロン製ゾンデに1mlシリンジを接続した注入器で,腟内3~4cmに行った.その結果,排卵の誘起率は,45頭中43頭,95.6%であった.人工授精の結果,実験1の受胎率は,16頭中1頭,6.6%であった.実験2および実験3では,それぞれの受胎率は18頭中6頭,33.3%,9頭中7頭,77.8%であった.産子数は,実験2で,平均4.0±0.4(SE)匹,実験3で3.3±0.5匹で,両者に有意差は認められなかった.また,hCG投与後,授精までの時間と受胎率の間にも差は認められなかった.以上のように,猫において新鮮精液による腟内授精で,受胎に必要な精子数は80×106であることが明らかとなった.
  • 筒井 敏彦, Itsushin YAMANE, 服部 郁子, 黒沢 紀子, 松永 秀夫, 村尾 育子, 神田 政典, 堀 達也
    原稿種別: FULL PAPER
    専門分野: Theriogenology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1169-1175
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    猫の非繁殖期に胚移植(ET)を実施し,持続性progesterone(P4)投与によって妊娠を存続させ,正常子を得ることを計画した.eCG,hCG投与によって排卵を誘起した供卵猫5頭について,交配後6日に胚回収を行った.1頭あたり24~53個,平均37.2±.6.4個で,多くは収縮桑実胚であった.胚の回収率は,49.0~93.3%,平均73.8±9.6%であった.受卵猫として豚下垂体FSH製剤,hCGで発情,排卵が誘起できた19頭中18頭(94.7%)に,収縮桑実胚を5個ずつ子宮内ETを行った.その結果,17頭(94.4%)が受胎し,着床数は,2~5個,平均3.7±0.3個であった.これらのうち15頭は,妊娠24日から持続性P4投与を行った結果,妊娠64~69日に正常分娩または帝王切開によって,1~5匹,平均3.4±0.3匹の正常子を得た.しかし,持続性P4投与を行わなかった2頭は妊娠中頃で流産した.以上のように,非繁殖期の猫で,ETを実施し,持続性P4投与によって妊娠を存続させ,正常子を得ることが可能となった.
  • 高島 康弘, 松本 安喜, 大塚 治城
    原稿種別: NOTE
    専門分野: Virology
    2000 年 62 巻 11 号 p. 1227-1230
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/01/31
    ジャーナル フリー
    マウス脾臓細胞,マウスリンパ球にPRVを加えマイトジェン存在下にて培養したところ,非感染コントロールに比して細胞増殖能が低下した.この効果は紫外線照射で不活化されたウイルスにも認められた.またPRVはマウスリンパ球内では増殖しなかった.これらの結果から,PRV感染によるマウスの免疫不全現象はウイルス増殖とは無関係であり,ウイルス感染の比較的早い段階に由来することが示唆された.
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